
はじめに:共に歳を重ねる時代へ
犬や猫などのペットと暮らしていると、年を重ねるたびに家族の一員としての存在をいっそう感じるようになります。
散歩の速度がゆっくりになったり、眠る時間が増えたり――そんな小さな変化に、歳月の流れを感じる方も多いのではないでしょうか。
日本経済新聞によると、近年は高齢の犬や猫の通院が増え、ペット関連の年間支出が2兆円を超えるまでに拡大しているそうです(出典:日本経済新聞「高齢の犬や猫、病院通い増加 ペット支出、2兆円超え」)。
長生きするペットが増える一方で、健康や快適さを支えるモノづくりの重要性も高まっています。
ペットの高齢化と通院ニーズの増加
高齢ペットの割合・変化傾向
今や犬や猫も長生きが当たり前になり、10歳を超えても元気に暮らす姿をよく見かけるようになりました。室内飼育が一般的になり、医療や食事の質も向上したことで、ペットの寿命はこの10年で大きく延びています。
その一方で、年齢に伴う関節や内臓のトラブル、介護の必要性といった課題も増え、飼い主の生活や製品へのニーズも変化しています。
もはや“高齢ペットのケア”は特別な話ではなく、ペットと暮らす誰にとっても身近なテーマになってきています。
医療・通院ニーズの拡大
日本獣医師会の「診療料金実態調査(令和5年度)」によると、動物病院での診療費はこの数年間で着実に上昇しています。
特に、再診料や注射料、検査費用などが増加しており、慢性疾患や加齢に伴う通院ケースが増えていることがうかがえます(日本獣医師会 診療料金実態調査)。
これは、ペットの高齢化により医療・通院ニーズが年々高まっていることを示す明確なサインと言えるでしょう。
家計・社会環境の変化とペット関連支出の構造
生活コスト・物価上昇との連動

家計全体を見れば、2024年の「二人以上世帯」の月平均消費支出は 300,243 円(前年比名目2.1 %増)となっており、物価変動の影響を受けながらも支出自体は拡大傾向にあります。総務省統計局
こうしたコスト上昇の流れは、ペット飼育費にも影響を及ぼす可能性が高く、医療費・素材・サービスの価格にも下支え圧力をかける要因となり得ます。
ペット関連支出の拡大・構造変化
ペットと暮らす家庭では、近年「飼う」から「ケアする」時代へと意識が変わりつつあります。
医療費やフード、グルーミング、トレーニング、介護用品など、支出の内訳は多様化し、金額だけでなく内容面でも変化しています。
特に高齢化が進むなかでは、予防・健康維持・快適な生活環境を整えるための支出が増え、ペットを「家族の一員」として支える意識が広がっています。
こうした動きは、単なる消費拡大ではなく、ペットの“生活の質(QOL)”を高める支出構造へのシフトといえます。
つまり、これからのペット関連産業には、愛情とケアの両立を前提とした製品づくりやサービス提供が求められているのです。
ペット快適工房として考えたい価値提供の方向性

高齢ペットを支える視点を前提としつつ、弊社の強み(繊維縫製、EVAなどのクッション性のある素材/ネオプレンなど)を活かして貢献できそうな領域・アイデアを、以下に整理しました。
歩行補助サポーター・マナーパンツ
歳を重ねたペットにとって、立ち上がる・歩くといった動作は少しずつ負担が増えていきます。
そんな時に役立つのが、足腰をやさしく支える歩行補助サポーターです。軽くて柔らかい素材を使い、動きを妨げずにサポートできる設計が理想です。
また、排泄のコントロールが難しくなる高齢期には、マナーパンツも欠かせません。
吸水性や防水性に加え、着脱のしやすさや通気性など、ペットにも飼い主にも快適な使い心地を追求したいところです。
滑り止め性能・足場を安定化させるマット
高齢ペットは筋力低下や関節の柔軟性低下により、歩行時の滑り事故リスクが高まります。適度なグリップ力を持ちながらも足裏に優しい摩擦設計(摩擦係数設計、表面形状)を考えたマット製品が介護・暮らし支援の領域でニーズが期待できます。
介護補助グッズ
寝たきりや動きにくくなったペットのため、体位を支えたり、体を持ち上げたり補助するクッションやベッド構造も考えられます。軽くて衛生的な素材設計が求められます。
通気性・抗菌性素材などの追加機能
高齢期には皮膚トラブルや被毛のケアが重要となるため、ムレを防ぐ通気性設計、湿度制御性能や抗菌性処理を含めた素材仕様は、快適性を高める上で価値がある要素になります。
「不安を煽る」のではなく、「支え合う未来」を見る視点
高齢化という現象は、人にもペットにも同じように訪れる自然の流れです。
歳を重ねることは決して“衰え”だけを意味するものではなく、その時間をどう快適に、穏やかに過ごせるかを考えることが大切だと思います。
私たちペット快適工房は、そうした“共に生きる時間”を支えるために、素材・構造・使い心地のひとつひとつに想いを込めています。
歩く・眠る・寄り添う――そのすべての瞬間を、少しでもやさしく包み込めるように。
ペットが年を取り、飼い主も年を重ねていく。
その過程にある小さな変化を受け止めながら、「長く一緒にいられる暮らしを形にする」ことが、私たちのものづくりの原点です。
不安ではなく、寄り添いと安心でつながる未来へ。
それが、これからのペットとの関係を支える工房としての、私たちの願いです。